【要確認】その移動用発電機 「保安規定」「主任技術者」届出してますか?

京都・亀岡市の行政書士、松川正義です。
建設現場やイベント会場で活躍する可搬型(移動用)発電機。「現場で使っているだけだから特に手続きは不要」と思っていませんか?実は出力10kW以上の移動用発電機は「自家用電気工作物」に該当し、電気事業法に基づく義務が発生します。主任技術者の選任・届出と保安規程の作成・届出の2つが必要であり、これを怠ると法令違反となります。本コラムでは、見落とされがちなこの義務をわかりやすく解説します。


10kW以上の移動用発電機は「自家用電気工作物」

電気事業法では、電気工作物をその用途・規模によって区分しています。出力10kW以上の発電設備は、電気事業法上「発電所」として扱われ、「自家用電気工作物」の適用を受けます。可搬型エンジン発電機についても、出力10kW以上の設備は「自家用電気工作物」となり、「移動用電気工作物」として法規制の対象になります。

発電機の出力 電気工作物の区分 法的義務
10kW未満 一般用電気工作物 特別な届出・主任技術者の選任は不要
10kW以上 自家用電気工作物
(移動用電気工作物)
主任技術者の選任・届出
保安規程の作成・届出が必要
kVAとkWの換算に注意:発電機のカタログスペックは「kVA(皮相電力)」で表記されていることが多いですが、法令上の基準は「kW(有効電力)」です。一般的な可搬型ディーゼル発電機の力率は0.8であることが多く、例えば12.5kVAの発電機は約10kWとなり、ちょうど届出が必要な基準に該当します。仕様書の力率を確認して正確に換算することが重要です。

義務の2点セット:何をしなければならないか

10kW以上の移動用発電機を使用する際に必要な手続きは2つです。

義務 01

保安規程の作成・届出(電気事業法第42条)

移動用電気工作物を設置し使用する者が、維持および運用(移動の区域・修理・改造・保管・点検・整備・使用・据付等)について保安規程を作成し、届け出なければなりません。自社の使用実態に合わせた保安規程を作成します。届出先は、現場所在地を所管する産業保安監督部です。

義務 02

電気主任技術者の選任・届出(電気事業法第43条)

移動用電気工作物を設置し使用する者が、使用する場所またはこれを直接統括する事業所の主任技術者を選任し、届け出なければなりません。主任技術者を選任または解任したときは、遅滞なく届け出る必要があります。主任技術者の選任・解任時は、概ね30日以内に所轄の産業保安監督部へ届出が必要です。

参考

保安管理業務の外部委託承認(自社に電気主任技術者がいない場合)

自社内に電気主任技術者の有資格者がいない場合は、電気管理技術者(個人事業主)や電気保安法人など国の認定を受けた専門家に保安管理業務を外部委託することができます。外部委託を行う場合は、産業保安監督部への委託承認申請が別途必要です。


誰が「使用する者」として義務を負うのか

この義務を負うのは、発電機を購入・リースして現場で実際に使用する事業者です。発電機メーカーやレンタル会社ではありません。建設業者・イベント会社・工事業者など、発電機を現場で稼働させる事業者が届出義務者となります。

義務を負う者の例

建設業者・工事業者

建設現場で仮設電源として10kW以上の発電機を稼働させる建設業者・電気工事業者は、届出義務の対象となります。

義務を負う者の例

イベント・撮影運営会社

野外イベントや映像撮影現場で移動用発電機を使用する事業者も対象です。「一時的な使用だから」という理由での免除はありません。

義務を負う者の例

災害・非常用として保有する事業者

普段は使用していない場合でも、10kW以上の発電機を保有し使用する可能性があるなら保安規程の策定・主任技術者の選任が求められます。


届出先と手続きの流れ

  1. 使用する発電機の出力を仕様書で確認(kVA表記の場合は力率0.8で換算してkWを算出)
  2. 10kW以上であれば自家用電気工作物(移動用電気工作物)に該当することを確認
  3. 主任技術者の選任方法を決定(自社選任 or 外部委託)
  4. 経済産業省公表の「移動用保安規程モデル」をもとに保安規程を作成
  5. 現場所在地を管轄する産業保安監督部へ保安規程届出・主任技術者選任届出を提出
    (保安ネット〔電子申請〕での提出が標準)
  6. 発電機の使用開始・定期的な自主点検・整備の実施
  7. 主任技術者の変更・解任時は30日以内に変更届出
届出先は「現場の管轄」:届出先は発電機を使用する現場の所在地を管轄する産業保安監督部です。本社所在地の管轄ではないことに注意が必要です。複数の現場・地域にまたがって使用する場合は、使用地域を保安規程に明記する必要があります。

よくある「知らなかった」ケースと罰則

よくある誤解①

「レンタルだから不要」は間違い

発電機をレンタルして使用する場合も、使用する事業者が届出義務を負います。レンタル会社が手続きを代行してくれることはありません。

よくある誤解②

「一時的な使用だから不要」は間違い

工期が短い現場や短期間のイベントでも、10kW以上の発電機を使用する以上は手続きが必要です。使用期間の長短は関係ありません。

よくある誤解③

「低圧だから自家用ではない」は間違い

移動用発電機は低圧(600V以下)で出力していても、出力10kW以上であれば自家用電気工作物に該当します。受電電圧ではなく発電機の出力で判断します。

罰則:保安規程の未届出・主任技術者の未選任は電気事業法違反となります。電気事業法第119条により50万円以下の罰金が科される可能性があります。また法人の従業員が違反した場合、法人にも罰則が科される両罰規定(同法第122条)が適用される可能性があります。「知らなかった」では済まされません。

まとめ

移動用(可搬型)発電機であっても、出力10kW以上であれば自家用電気工作物として電気事業法の規制対象となります。保安規程の作成・届出と電気主任技術者の選任・届出は使用前に済ませておく必要があります。「現場で使っているだけ」という感覚では見落としがちなこの義務ですが、違反すれば罰則の対象となります。手続きに不安がある方は、早めに専門家へご相談ください。

当事務所の強み:当事務所の代表行政書士は第三種電気主任技術者・第一種電気工事士の両資格を保有しています。保安規程の作成・産業保安監督部への届出手続きを、電気の専門知識を活かしてサポートします。
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