「特定技能1号で電気工事士は雇えるか?建設分野と電気工事業の関係を整理する」

京都・亀岡市の行政書士、松川正義です。
「特定技能1号を持っていれば電気工事士として雇えますか?」という声をお聞きしました。結論から言うと半分正解で半分誤解です。特定技能と電気工事士は、根拠となる法律も審査の視点もまったく別の制度であり、片方の資格があってももう片方を自動的に満たすわけではありません。本コラムでは、特定技能制度(建設分野)と電気工事士法という2つの制度の関係を整理し、電気工事会社が外国人材を適法に活用するための正しい理解を解説します。


まず大前提:2つの制度は「重なる部分」と「別々の部分」がある

特定技能と電気工事士は、それぞれ次のような役割を持つ別々の制度です。

レイヤー①:在留資格(出入国管理及び難民認定法)
日本に滞在し、就労する「資格」があるかどうかを定める制度。「特定技能」はこのレイヤーに属する。外国人がどんな仕事に就けるかの大枠を決める。
レイヤー②:業務独占資格(電気工事士法)
電気工事という「特定の作業」を行うために必要な技術資格。国籍を問わず、日本人であっても電気工事士の資格がなければ電気工事はできない。「電気工事士」はこのレイヤーに属する。
つまり:特定技能は「電気工事の現場で働いてよい」という在留資格上の許可であり、電気工事士は「実際に配線工事などの作業を行ってよい」という技術資格です。2つは別物であり、特定技能を取得しても電気工事士の資格を自動的に得られるわけではありません。

Q&A:よくある質問に答えます

特定技能1号(建設・ライフライン設備)を持っていれば、電気工事の現場で働けますか?

はい、働けます。建設分野・業務区分「ライフライン・設備」の特定技能1号は、指導者の指示・監督を受けながら電気通信・ガス・水道・電気その他のライフライン・設備の整備・設置・変更または修理に係る作業に従事することが認められています。在留資格上は問題ありません。

特定技能1号を持っていれば、単独で配線工事を行えますか?

いいえ、できません。電気工事士法上、一般用電気工作物・自家用電気工作物(低圧部分)の電気工事は、電気工事士(第一種または第二種)の免状を持つ者でなければ行うことができません。特定技能1号の在留資格があっても、電気工事士の免状を別途取得しない限り、単独での配線工事は電気工事士法違反となります。

では特定技能で雇った外国人は現場で何ができるのですか?

電気工事士の免状を持つ社員(日本人・外国人問わず)の指導・監督のもとで、補助作業(材料の運搬・仮設の準備・清掃・保守管理など)に従事することができます。これは特定技能制度上の「指導者の指示・監督を受けながら」という要件とも合致します。

特定技能の外国人に電気工事士を取得させることはできますか?

はい、可能です。第一種・第二種電気工事士には受験資格の制限がなく、国籍を問わず誰でも受験できます。特定技能1号の在留期間(通算5年)の中で、第二種電気工事士の取得を目指す育成計画を立てることが現実的かつ効果的です。免状取得後は単独作業が可能になり、即戦力として活躍できます。

逆に、電気工事士の資格を持つ外国人なら、特定技能の試験は不要ですか?

いいえ、不要にはなりません。電気工事士の資格はあくまで技術資格であり、在留資格を取得するためには別途、建設分野特定技能1号評価試験(ライフライン・設備区分)と日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT N4以上)に合格する必要があります。母国で電気工事の実務経験や資格を持っていても、日本の在留資格としての試験はクリアする必要があります。


2つの制度の比較表

特定技能1号(建設・ライフライン設備) 電気工事士(第一種・第二種)
根拠法 出入国管理及び難民認定法 電気工事士法
役割 日本での就労を認める在留資格 電気工事の作業を行うための技術資格
取得方法 建設分野特定技能1号評価試験+日本語試験 電気工事士試験(学科+技能)
国籍要件 外国人向けの在留資格制度 国籍を問わず受験可能
これだけで現場で作業できるか 補助作業はできるが単独工事は不可 免状があれば単独で電気工事が可能
所管官庁 出入国在留管理庁・国土交通省 経済産業省

電気工事会社が取るべき現実的な育成ステップ

在留資格と技術資格、両方を踏まえた現実的な育成ステップを整理すると、以下のような流れになります。

  1. 特定技能1号評価試験+日本語試験の合格を確認し、在留資格を取得(または変更)
  2. 有資格者の監督下での補助作業として現場に配置(材料運搬・仮設準備・清掃など)
  3. 並行して第二種電気工事士の取得を目指す学習支援を実施(受験資格は不要、誰でも受験可)
  4. 第二種電気工事士の免状取得後、単独での低圧工事に従事可能
  5. 実務経験を積みながら、第一種電気工事士・建設分野特定技能2号評価試験へのステップアップを検討
  6. 特定技能2号取得後は、班長・現場リーダーとして工程管理も担える人材へ成長
注意:育成ステップを踏まずに「特定技能を持っているから」という理由だけで単独の電気工事をさせてしまうと、電気工事士法違反となります。会社としても処罰の対象になり得るため、現場配置のルールを社内で明確にしておくことが重要です。

建設業許可との関係も忘れずに

電気工事士の資格を取得した外国人材は、将来的に建設業許可の営業所専任技術者として登録できる可能性もあります。第一種電気工事士の免状取得は、会社の事業基盤強化にも直結する重要なステップです。長期的な視点で人材育成と会社の許可要件強化を同時に進めることが、電気工事会社にとって理想的な戦略といえます。

当事務所の強み:当事務所の代表行政書士は第三種電気主任技術者・第一種電気工事士・外国人雇用労務士の資格を保有しています。特定技能の在留資格手続きと電気工事士法の専門知識を兼ね備え、外国人材の採用から育成計画、将来の建設業許可活用まで一貫してアドバイスできます。

まとめ

「特定技能1号で電気工事士は雇えるか?」という問いへの答えは、「在留資格としては雇えるが、電気工事士の資格がなければ単独作業はできない」というのが正確な答えです。特定技能はあくまで「日本で働く許可」であり、「電気工事を行う技術資格」とは別物です。両者の違いを正しく理解したうえで、補助作業からスタートし、電気工事士の取得を計画的に支援することが、適法かつ効果的な外国人材活用の鍵となります。

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