【会社にも罰金】電気工事業者が「届出も代行」してしまった時のリスクとは【2026年改正】

京都・亀岡市の行政書士、松川正義です。
変電設備設置届・蓄電設備設置届・発電設備設置届など、電気工事に関わる官公署への提出書類は数多くあります。「工事のついでに、うちで届出書類も作って出しておきますよ」——善意からこう申し出る電気工事業者の方は少なくありません。しかし実はこの行為、行政書士法に抵触する可能性があることをご存じでしょうか。本コラムでは、なぜ電気工事業者が施主に代わって官公署提出書類を作成できないのか、その理由を法律の条文に沿って詳しく解説します。


電気工事に関連する「官公署提出書類」にはどんなものがあるか

電気工事業者が現場で関わることの多い、官公署への届出・申請書類には以下のようなものがあります。

提出先:消防署

変電設備・発電設備・蓄電設備設置届

火災予防条例に基づき、一定規模以上の電気設備を設置する際に必要な届出です。

提出先:産業保安監督部

保安規程届出・主任技術者選任届

電気事業法に基づき、自家用電気工作物の設置者が行う届出です。

提出先:都道府県・経済産業大臣

電気工事業の開始届出・変更届

電気工事業法に基づく登録・みなし登録の届出です。

提出先:労働基準監督署

電気工作物の設置届・建設工事計画届

労働安全衛生法に基づく届出が必要になる場合があります。

共通点:これらはすべて「官公署(消防署・産業保安監督部・都道府県・労働基準監督署など)に提出する書類」です。誰が作成し、誰が提出するかという点に、実は重要な法律上のルールが存在します。

行政書士法第1条の2・第19条が定める「独占業務」

行政書士法には、官公署提出書類の作成について明確な定めがあります。

条文 内容
第1条の2 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類等を作成することを業とする。
第19条第1項
(2026年1月改正)
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、官公署に提出する書類等を作成してはならない。
結論:変電設備設置届・保安規程届出・電気工事業の開始届出など、官公署に提出する書類を「他人(施主)の依頼を受け、報酬を得て」作成することは、行政書士または行政書士法人でなければ行うことができません。これは電気工事士・電気主任技術者などの技術資格を持っていても関係ありません。技術資格と書類作成代行の資格は、まったく別の話です。

2026年1月改正で何が変わったのか

令和7年6月公布・令和8年1月1日施行の改正行政書士法により、独占業務の範囲がより明確になりました。

「いかなる名目によるかを問わず」が明文化:改正前から実質的に同様の解釈はされていましたが、改正後は条文上に「いかなる名目によるかを問わず」という文言が明記されました。これにより、「サービス料」「諸経費」「工事費の一部」など、どんな名目で対価を得ていても、実質的に書類作成の対価であれば独占業務違反となることが条文上はっきりしました。「無償でやっている体(てい)」にして、実際は工事費に上乗せしているようなケースも対象になり得ます。

具体例で確認:OKなケース・NGなケース

OK:施主自身が作成し、電気工事業者が技術的な情報を提供するだけ

設備の仕様・配置図など、書類作成に必要な技術情報を施主に提供することは問題ありません。最終的な書類の作成・編集・提出を施主自身が行うのであれば、行政書士法には抵触しません。

OK:施主から行政書士へ直接依頼してもらう

電気工事業者が「届出は行政書士に依頼することをおすすめします」と案内し、施主が行政書士に直接依頼する形であれば適法です。電気工事業者は工事に専念できます。

×

NG:電気工事業者が施主に代わって届出書類一式を作成する

「工事込みでこちらで届出も済ませておきます」という形で、施主の代わりに届出書を作成・記入し、報酬(工事費への上乗せ含む)を得て行うことは行政書士法違反となる可能性が高いです。

×

NG:「サービスだから」と無償をうたいつつ実質的に工事費に含める

表向き「無料サービス」としていても、実際には届出代行の手間が工事金額に組み込まれている場合、改正後の「いかなる名目によるかを問わず」の規定により違法と判断される可能性があります。


なぜ電気工事業者だけに任せてはいけないのか(制度趣旨)

行政書士法がこのような独占業務を定めている理由は、単なる「縄張り意識」ではありません。官公署への提出書類は、施主の権利・義務に直接関わる重要な書類です。記載内容に誤りがあれば、施主が不利益を被ったり、後々の法的トラブルに発展したりする可能性があります。行政書士は法律に基づく国家資格者として、書類作成の専門知識と職業倫理(守秘義務・責任)を有することが制度上担保されています。電気工事の技術力と、書類作成・行政手続きの専門知識は、本来別のスキルセットです。


違反した場合の罰則(両罰規定を含む)

違反内容 罰則
無資格者が報酬を得て官公署提出書類を作成(個人) 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
(行政書士法第21条)
従業員が違反した場合の所属法人(会社)への適用 100万円以下の罰金
(両罰規定・改正行政書士法第23条の3)
両罰規定に注意:違反した担当者個人だけでなく、その担当者が所属する電気工事会社にも罰金が科される可能性があります。2026年1月施行の改正で両罰規定が整備・強化されました。「会社の指示でやっていた」「サービスの一環だった」では法人責任を免れないケースもあります。

電気工事業者が取るべき正しい対応

対応①

施主への案内をルール化する

「届出が必要な工事の場合は行政書士への依頼をご案内する」という社内ルールを整備し、現場担当者が個別判断で書類作成を引き受けないようにしましょう。

対応②

提携する行政書士を決めておく

電気の専門知識を持つ行政書士と提携しておけば、施主への案内がスムーズになり、届出漏れによる施主のリスクも防げます。紹介体制を整えることが信頼にもつながります。

対応③

これまでの運用を見直す

社内で「サービスの一環」として届出代行を行ってきた場合は、早急に運用を見直しましょう。過去の対応について不安がある場合も、専門家へ相談することをおすすめします。

当事務所の強み:当事務所の代表行政書士は第三種電気主任技術者・第一種電気工事士の両資格を保有しています。電気の専門知識を持ちながら、適法に官公署提出書類の作成を代行できるため、電気工事業者様との連携・パートナーシップを歓迎しています。

まとめ

変電設備設置届をはじめとする官公署提出書類の作成は、行政書士の独占業務です。電気工事業者がどれだけ専門的な技術知識を持っていても、施主に代わって報酬を得て書類を作成することは法律上認められていません。2026年1月の改正により「いかなる名目によるかを問わず」という規定が明確化され、工事費への上乗せといった形式も対象になり得ることが明らかになりました。施主のためにも、自社のためにも、正しい役割分担を意識した運用に切り替えることが重要です。

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