【要注意!!】電気工事会社が外国人を現場で使うとき「技人国ビザ」では違法になる理由

京都・亀岡市の行政書士、松川正義です。
「技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザを持っている外国人がいるから、現場に入れても問題ないだろう」——このような判断で外国人を現場作業に従事させてしまう電気工事会社が後を絶ちません。しかし技人国ビザで現場作業に従事させることは、不法就労にあたる可能性があり、雇用した会社が「不法就労助長罪」で処罰される可能性があります。本コラムでは、なぜ技人国ビザで現場作業が違法になるのか、その法的な構造を条文に沿って解説します。


技人国ビザとは何か:「現場作業」は対象外

技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザとは、外国人が日本で「自然科学・人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務」または「外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務」に従事するための在留資格です(入管法別表第一の二)。

条文の原文(入管法別表第一の二):「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項…中略…に掲げる活動を除く。)」

要約すると、「大学等で学んだ専門知識・技術を活かした業務」が対象であり、現場での電気工事作業(配線・結線・機器取付・試運転等)はこの要件を満たしません。

技人国ビザでできる業務・できない業務

技人国ビザで「できる」業務(電気工事業の場合)

工事施工図の作成・工程管理・品質管理・安全管理計画の立案・原価管理・発注者との技術的折衝・積算・設計業務・現場職人の指揮・監督(施工管理)など。
※出入国在留管理庁の公式許可事例でも「電気工学科卒業者が電気工事会社で施工図作成・職人の指揮監督に従事する」ことが認められています。

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技人国ビザで「できない」業務(電気工事業の場合)

ケーブルの配線・端末処理・結線作業・スイッチ・コンセントの取付・照明器具の取付・盤内配線・接地工事・試運転・電気工事作業全般(材料の加工・取付・調整等)など。
これらは大学・専門学校の専門知識を必要としない「現場作業(技能労働)」に分類され、技人国ビザの在留資格外の活動とみなされます。


なぜ「在留資格外の活動」が問題になるのか:法的構造

在留資格に定められた範囲外の活動に従事することは、入管法上の「資格外活動」に該当します。

条文 内容 対象者
入管法第19条第1項 在留資格をもって在留する者は、当該在留資格に応じた活動以外の活動を行ってはならない 外国人本人
入管法第70条第1項第4号 資格外活動を行った者は3年以下の懲役または300万円以下の罰金 外国人本人
入管法第73条の2第1項
(不法就労助長罪)
事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者・斡旋した者は3年以下の懲役または300万円以下の罰金 雇用した会社・経営者
重要:「知らなかった」は免責されない:入管法第73条の2第2項は「不法就労と知らなかった場合でも、知らなかったことに過失がある場合は処罰する」旨を定めています。つまり「技人国ビザを持っていると確認したから大丈夫だと思っていた」「ビザの種類まで確認しなかった」という言い訳は通用せず、雇用前の在留資格確認義務を怠った会社も処罰の対象になり得ます。

よくある違法パターン3選

違法パターン①

「施工管理で採用したのに、人手が足りなくて現場作業もやってもらっている」

技人国ビザで採用した外国人に、繁忙期や人手不足を理由に現場での電気工事作業を兼務させるケースです。採用時の業務内容と実際の業務が乖離しており、資格外活動に該当します。「たまにしかやらせていない」「本人が自発的にやっている」も免責にはなりません。

違法パターン②

「技人国ビザを持っているから電気工事の現場なら何でもOKだと思っていた」

「電気系の大学を出ているから電気工事もできる」という誤解です。技人国ビザは「大学等で学んだ専門知識を活かした業務」が対象であり、現場での肉体的な電気工事作業は含まれません。電気の知識と現場作業は別物です。

違法パターン③

「在留カードを確認したらビザがあったので、業務内容まで確認しなかった」

在留カードに記載されている在留資格が「技術・人文知識・国際業務」と確認できても、実際の業務内容がその在留資格の範囲外なら不法就労です。「ビザがある=何でもOK」ではなく、「ビザの種類」と「実際に行う業務内容」の整合性を必ず確認する必要があります。


罰則:2025年6月の改正で厳罰化

2025年6月の入管法改正により、不法就労助長罪の罰則が大幅に引き上げられました。

改正前 改正後(2025年6月〜)
懲役刑 3年以下の懲役 5年以下の拘禁刑
罰金刑 300万円以下の罰金 500万円以下の罰金(懲役との併科あり)
法人への適用 両罰規定あり 両罰規定あり(法人にも500万円以下の罰金)
法人(会社)にも罰則:両罰規定により、違反した担当者個人だけでなく、その担当者が所属する会社(法人)にも罰金が科される可能性があります。「担当者が勝手にやった」では法人責任を免れないケースがあります。

では、現場作業に外国人を使うにはどうすれば良いか

電気工事の現場作業に外国人に従事してもらうためには、在留資格が「現場作業」を認めているものである必要があります。

現場作業OK①

特定技能1号(建設・ライフライン設備)

電気工事の現場補助作業が認められています。ただし電気工事士免状がない場合は単独作業は不可。有資格者の監督下での補助作業からスタートします。

現場作業OK②

永住者・定住者・日本人配偶者等

就労制限のない在留資格を持つ方は業務内容の制限なし。現場作業も管理業務も自由に従事できます。採用の際に最も柔軟に活用できます。

現場作業OK③

育成就労(2027年4月〜)

技能実習制度の後継。3年間の育成就労期間中、有資格者の監督下での現場作業が認められます。特定技能1号への移行を前提とした制度です。

施工管理はOK

技人国ビザは施工管理業務に活用

技人国ビザは「現場作業」ではなく「施工管理・設計・積算」等に活用します。電気系学科の卒業者を施工管理職として採用するルートが最も審査が通りやすいです。


採用前に確認すべきチェックポイント

採用前の必須確認事項:外国人を採用する際は、以下の3点を必ず確認してください。

在留カードの種類:「技術・人文知識・国際業務」か「特定技能」か「永住者」か等を確認
在留カードの有効期限:期限切れのまま就労させると不法就労となります
実際に行わせる業務内容と在留資格の整合性:「現場作業をさせるのか」「施工管理をさせるのか」を明確にし、その業務が在留資格の範囲内かを確認する

不明な場合は採用前に必ず専門家(行政書士・弁護士)に相談することを強くおすすめします。

まとめ

技人国ビザは「専門知識を活かした管理・設計業務」のためのビザであり、電気工事の現場作業(配線・取付・接地等)に従事させることは在留資格外の活動として不法就労に該当します。2025年6月の入管法改正により罰則も厳罰化され、会社として看過できないリスクとなっています。「ビザがあるから大丈夫」ではなく、「どのビザで何の業務ができるのか」を正確に理解したうえで採用・業務配置を行うことが、会社を守る唯一の方法です。外国人採用を検討している場合は、まず専門家へご相談ください。

当事務所の強み:当事務所の代表行政書士は第三種電気主任技術者・第一種電気工事士の両資格に加え、「外国人雇用労務士(外労士)」(一般社団法人全国外国人雇用推進機構認定)を保有しています。電気工事業の現場知識と在留資格の専門知識を兼ね備えており、「どのビザで何の業務ができるか」を正確にアドバイスします。
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